一人の生徒が陽明先生に尋ねた、

 

「聖人って、いつも、

 どんなことを考えてるですか?」

 

先生は、答えられた、

 

「簡単に言うと、

 聖人は、世の中にある生きとし生けるものを、

 みんな分け隔てなく、自分の身内、家族と同じように、

 慈しみを抱いてるねん。

 

 そして、

 すべての人を我が子を養うように、

 すべての人が、

 すべての人に優しい気持ちがもてるように

 育もうと考えてる、

 そういう人やな、聖人というのは」

 

 

生徒たちは、そう言われ、

少し気後れしているようだ、

 

先生はその様子を見てさらに続けられた、

 

「例えば、聖人やと言われる、

 孔子、堯や舜なんかの心はそんな感じや。

 

 ガンジー、マザーテレサなんかも、

 多分、そんな感じやとおもうで。

 

 ああいう人たちは、

 世の人すべてを我が子のように愛し、

 そして、すべての人がそんな優しさを

 もてるように尽くしてはる」

 

 

「でも、大事なことはここからや、

 よく聞いてや、

 

 ええか、

 みんなの心も実は、

 その聖人たちは全く異なるところは、

 もともとは、なかったんや。

 

 それが、成長するにつれて、

 我欲が出てきて、

 物欲が大きくなってきて、

 損得ばかりで、

 物事を考えるようになって、

 

 優しく大らかな気持ちを

 持っている人も、

 いつの間にか心が荒んで、

 優しさを失ったりする。

 

 そして、あろうことか、

 我が子のように他人を愛するどころか、

 肉親を仇のようにみる人、

 そんな人さえ出てくる。

 

 聖人と言われる人は、

 そのように荒んだ人が

 世の中に増えてしまっていること、

 それに心を苦しめているんや。

 

 だから、聖人は、世の人に問うんや、

 

 目の前で苦しんでいる人、

 世界のどこかで苦しんでいる人、

 そこから目を背けずに見て欲しい、

 そして、自分の心の声に、

 よく耳をすませて欲しい。

 

 その声は、ホントに、

 すごく微かかもしれない、

 でも、ほら、

 聞こえるだろ?

 

 世の中のものを、

 天地万物を愛おしく、

 思う心があるだろ?

 

 聖人は、 

 そうやって、すべての人が、

 自分の我欲に打ち勝ち、

 その人本来の優しい気持ちになれるように

 願い、そして、行動してるんや」

 

 

生徒たちは、一応のところ、

納得はしているが、

 

でも、自分にそんなのは無理じゃないか?

そんな顔をしている生徒たちに、

 

陽明先生は、

このように続けれた、

 

(▶️第13話(後半)に続く)

 

 

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