陽明先生が生徒たちに質問しました、

「みなさんは修行にあたり、

 どんなことを意識していますか?」

 

一人の生徒は手をあげ、先生に言いました、

 

「私は、心が澄み切っているよう感じでなり、

 とてもいい感じなんです」

 

 

先生は、少し微笑んで、

「それは、今の君の心の状況だね、

 聞きたいのは、

 どのようなことを意識しているのかだよ」

 

 

違う生徒が言いました、

 

「昔の自分の心はもう私心にとらわれ、

 迷うことが多く、

 いつも不安で仕方がありませんでした、

 それが今では、自分の良知に従い、

 行動できるようになりました」

 

 

先生はそれに対して、

「それは修行の効果であって、

 聞きたいのは、

 どのようなことに意識をしているかだよ」

 

 

生徒たちは、先生が何を言わんとしているかが、

理解できず、ポカンとしています。

 

自分のことを話し始められました、

 

ー私は、意識しているのは、

 こんなことなんだよ。

 

 今、私がしている行動は、

 純粋に良知に基づいて行動できているか?

 そこに私欲が混じってはいないだろうか?

 私が意識しているのはこういうことだよ。

 

 稲盛和夫という20世紀を代表する、

 立派な経営者がいる、

 

 彼は新規事業を興すとき、

 いつもこのように自問自答するそうだ、

 

 動機善なりや私心なかりしか

 

 彼は学びの要諦をつかんでいるね。

 

 いつもこのように、自らの言動が、

 純粋に良知に基づいているか?

 日々、それに意識を向けているんだ。

 

 それだけに、

 集中するように意識しているんだ。

 

 そのようにしていけば、

 物事に接したとき、

 即座に良知に基づき行動できるようになるし、

 自らの心に私欲あらば、

 それを改めていくことができる。

 

 そのようにしてけば、

 自分の心が、

 私欲にとらわれることが減っていき、

 自分の中の良知を、

 はっきりと認識できるようになるよ。

 

 この良知は、まさに自分の中にある、

 大自然の摂理の一部といっていい。

 

 先ほどの稲盛和夫や松下幸之助は、

 良知に従って生きることを、

 大宇宙の法則に則って生きると、

 そう表現しているね。

 

 

 ただ、今、この瞬間、

 自分はちゃんと良知にもとづき、

 行動できているか?

 

 それだけに意識を向けることだ。

 

 それを、

 今の自分の心はイケてるのか?

 イケてないのか?

 

 以前と比べ、

 自分は成長しているのか?

 

 それに気を取られていると、

 却って心は乱れ、それこそ、

 宇宙の法則に則って生きるところからは、

 離れてしまうだろうよ。