「俺は、決して良い奴なんかじゃない、

 悪い奴なんだ!!」

 

 そういって、涙をこぼし、

 落ちこむ若者がいる。

 

 陽明は若者に穏やかに話し始める、

 

 

「君は自分が悪いことをしていると、

 思っているんだね、

 

 今、君がしていることを悪いことだと、

 知っているの誰だい?

 

 何が悪で、何が善なのかを、

 知っている自分がいるだろ?

 

 それを良知というんだ。

 

 人間は教えられずとも、

 何が善で、何が悪だかを

 ちゃんと知っている。

 

 すなわち、それが良知だ。

 

 人間には良い奴も、

 悪い奴もないんだ。

 

 この世には、善人も、

 悪人もいないんだ。

 

 ただ、人は皆、生まれながらにして、

 何が善か、何が悪かを、

 ちゃんと知っている。


 

 そして、

 できることなら、いつでも、

 その善に従って生きたいと願っている。

 

 

 

 だって、

 善とは逆の私心に負けず、

 善を発揮できたとき、

 

 すごく気持ち良いだろう?

 

 

 これ以上の幸せな気持ちは、

 ないと思うよ。

 

 

 だから、

 修行して、少しでも

 より多くの場面で、

 善に従って生きたい。

 

 それが人の道というものだよ。

 


 そして、常に善に生きれる人、

 それを聖人というんだよ。

 

 

 私も君と同じで、

 いつも善で生きれたら良いなと、

 頑張っているんだよ。

 


 

 君は、自分の中の悪を憎むがゆえ、

 涙をこぼしているんだろう?

 


 

 それは君の中に、間違いなく、

 聖人になれる心、

   良知があるということだね」

 


これは王陽明の晩年に至った境地だ。